システム構築・運用

jabber.jpGoogle Talk と 相互接続できないのが某所で問題になっている。」 昨日、そんな声が社内から聞こえてきました。 jabber.jp というのは 2001年6月のサービス開始以来、 KLab で運用している jabber (通信に XMLプロトコル XMPP を使う、 インスタント メッセージング サービス) サーバです。 KLab 社内公式 IM (インスタント メッセンジャー) として大いに活用していますが、 社外のかたにも開放しています。

その時は、 「え? Google ? あそこって他サイトとの相互接続ってやってなかったんでは?」 と、思わず答えてしまいましたが、 いつのまにか 相互接続を開始していたんですね。 知らなかった... orz
jabber.org などとは 相互接続できていたので、 Google Talk と接続できないのはアチラの問題、と思い込んでいました (_O_)。

多くの方々に利用して頂いている jabber.jp で調査を行なうよりは、 (落ちても誰も文句言わない ;) 自宅サイト gcd.org も Google Talk と接続できないという 問題をかかえていたので、gcd.org で調査を始めました。

通信できないときに最初にすべきことと言えば、 まずはパケットが届いているか調べることですね。 tcpdump でパケットダンプを取りつつ、 Google Talk (gmail.com) に jabber クライアントでログインして GCD (jabber.gcd.org) へチャットしてみました。

senri:/home/sengoku # tcpdump -i ppp0 port 5269
tcpdump: verbose output suppressed, use -v or -vv for full protocol decode
listening on ppp0, link-type LINUX_SLL (Linux cooked), capture size 96 bytes
07:07:11.672591 IP iproxy.google.com.32489 > gcd.org.5269: S 2133894537:2133894537(0) win 5720 <mss 1430,sackOK,timestamp 379820136 0,nop,wscale 0>
07:07:13.004593 IP gcd.org.5269 > iproxy.google.com.32489: S 1097254147:1097254147(0) ack 2133894538 win 5608 <mss 1414,sackOK,timestamp 401538947 379820136,nop,wscale 2>
07:07:11.837330 IP iproxy.google.com.32489 > gcd.org.5269: . ack 1 win 5720 <nop,nop,timestamp 379820153 401538947>
07:07:11.837527 IP iproxy.google.com.32489 > gcd.org.5269: P 1:142(141) ack 1 win 5720 <nop,nop,timestamp 379820153 401538947>
07:07:11.837574 IP gcd.org.5269 > iproxy.google.com.32489: . ack 142 win 1670 <nop,nop,timestamp 401538988 379820153>
07:07:11.837762 IP gcd.org.5269 > iproxy.google.com.32489: P 1:187(186) ack 142 win 1670 <nop,nop,timestamp 401538988 379820153>
07:07:12.002559 IP iproxy.google.com.32489 > gcd.org.5269: . ack 187 win 5720 <nop,nop,timestamp 379820169 401538988>
07:07:12.003738 IP iproxy.google.com.32489 > gcd.org.5269: P 142:242(100) ack 187 win 5720 <nop,nop,timestamp 379820170 401538988>
07:07:12.046764 IP gcd.org.5269 > iproxy.google.com.32489: . ack 242 win 1670 <nop,nop,timestamp 401539040 379820170>
07:07:13.486820 IP gcd.org.41294 > 216.239.57.83.5269: S 1003009747:1003009747(0) win 5656 <mss 1414,sackOK,timestamp 401539400 0,nop,wscale 2>

最初 Google 側から GCD の 5269番ポートへ接続があって、 それに答えて GCD から Google へ dialback 接続を行なう... ところが、それに対する応答が無い。 実際、netstat で調べてみると SYN_SENT のままです。

senri:/home/sengoku # netstat -nap | grep s2s
tcp        0      0 0.0.0.0:5269            0.0.0.0:*               LISTEN      14525/s2s
tcp        0      1 60.32.85.216:41294      216.239.57.83:5269      SYN_SENT    14525/s2s
...

見るからに、216.239.57.83 へ接続を試みていることが間違いのようです。 216.239.57.83 というのは gmail.com の A レコードの一つですね。

senri:/home/sengoku % host gmail.com.
gmail.com has address 64.233.161.83
gmail.com has address 216.239.57.83	←コレ
gmail.com has address 64.233.171.83
gmail.com mail is handled by 50 gsmtp163.google.com.
gmail.com mail is handled by 50 gsmtp183.google.com.
gmail.com mail is handled by 5 gmail-smtp-in.l.google.com.
gmail.com mail is handled by 10 alt1.gmail-smtp-in.l.google.com.
gmail.com mail is handled by 10 alt2.gmail-smtp-in.l.google.com.

では、jabber サーバ間の通信では接続先をどのように探せばよいのだっけ、と 調べてみると、 SRV レコードに サーバのホスト名とポート番号を 登録しておくことになっているようです。 以前は A レコードを使っていたような気がするのですが、 A レコードを直接使ってしまうと、 jabber ID (JID) のドメイン名と jabber サーバのホスト名を一致させる必要があって 柔軟性を欠くから、 SRV レコードに変更したということなのでしょう。

私の自宅サイトのような小規模サイトなら jabber.gcd.org というホスト名で jabber サーバを立ち上げることはさほど問題ではありませんが、 Google のような大規模サイトだと、gmail.com というホスト名で jabber サーバを立ち上げてしまうと運用が面倒なことになりそうです。 gmail.com の SRV レコードを引いてみると、 xmpp-server.l.google.com という応答が返ってきました。 つまり (JID のドメイン名である) gmail.com とは 異なるサーバ xmpp-server.l.google.com で jabber サーバを動かしているということです。

senri:/home/sengoku % host -t srv _xmpp-server._tcp.gmail.com.
_xmpp-server._tcp.gmail.com has SRV record 5 0 5269 xmpp-server.l.google.com.
_xmpp-server._tcp.gmail.com has SRV record 20 0 5269 xmpp-server1.l.google.com.
_xmpp-server._tcp.gmail.com has SRV record 20 0 5269 xmpp-server2.l.google.com.
_xmpp-server._tcp.gmail.com has SRV record 20 0 5269 xmpp-server3.l.google.com.
_xmpp-server._tcp.gmail.com has SRV record 20 0 5269 xmpp-server4.l.google.com.
% host -t a xmpp-server.l.google.com.
xmpp-server.l.google.com has address 64.233.167.125

というわけで通信できない原因が分かったので、 あとは GCD の jabber サーバに SRV レコードを参照させればいいだけですが、 幸い現在使っている jabberd2 サーバは SRV レコードを参照する機能を持っていました。 なので設定ファイル resolver.xml に次の行を追加するだけです:

  <lookup>
    <srv>_xmpp-server._tcp</srv>
    <srv>_jabber._tcp</srv>
  </lookup>

また、SRV レコードを参照する jabber サーバ&クライアントのために、 ネームサーバに SRV レコードを登録しておいたほうがいいでしょう。 GCD ではネームサーバとして djbdns を使っているので、 次の行を tinydns のレコードファイルに追加します:

:_jabber._tcp.jabber.gcd.org:33:\000\012\000\000\024\225\006jabber\003gcd\003org\000
:_xmpp-server._tcp.jabber.gcd.org:33:\000\012\000\000\024\225\006jabber\003gcd\003org\000
:_xmpp-client._tcp.jabber.gcd.org:33:\000\012\000\000\024\146\006jabber\003gcd\003org\000

以上の修正を行なった上で、 GCD と Google Talk それぞれに jabber クライアントでログインして、 チャットしてみると、あっさりつながりました。 続いて同様の修正を jabber.jp に対しても行ないました。

というわけで、約5ヶ月の間ご迷惑をおかけしましたが、 jabber.jp と Google Talk は、 ようやく本日より相互接続できるようになりました。


hiroaki_sengoku at 13:18|この記事のURLComments(0)TrackBack(1)

多くの会社と同様、KLab (および KLabセキュリティ) でも、 出来る限りオープンソースを利用するようにしています。 我々がDSASと呼んでいる システムインフラは、完全にオープンソースベースとなっており、例えば 「ファイアウォール兼負荷分散器兼ルータマシン」も Linux ベースとなっております。

なぜオープンソースにこだわるのか?

佐野氏のコラムに、 オープンソースにこだわる人の理由って正しい?:

    > オープンソースにこだわる人に理由を聞くと普通
    > 
    >  1.無料だから
    >  2.大勢の人が使っているからバグが少ないと思われる
    >  3.ソースコードが公開されているから安心
    > 
    > という答えが返ってきます。1と2はまあその通りだと思います。
    > しかし3は個人的にちょっと疑問です。
    > オープンソースにこだわっている人で、オープンソースソフトウェアの
    > ソースコードを実際に分析したことがある人って
    > どのくらいいるのでしょうか。
      ……
    > なのでオープンソースにこだわる理由を聞かれたらかっこいいこと
    > 言わずに素直に「無料だし機能に不満もないから」くらいにしておくのが
    > よいのではないでしょうか。

という問いかけがありました。さすが佐野さん、的を射た厳しいご意見ですね。 正直な話、KLab もオープンソースを利用しているといっても、 スミからスミまで分析しているわけではありませんし、 「無料だし機能に不満もないから」という面もあることは否定しません。 しかし、お客様にサービスを提供するという立場としては、 もう少し積極的な理由も持ちたいところです。

責任あるシステム運用を実現するためのオープンソース

システムにベンダ任せのブラックスボックスな部分があると、 その部分が原因の障害への対応は遅くなりがちですし、 原因究明を完全に行なうことができなければ、 再発防止策も対症療法的なものになりがちです。 これでは自信を持ってお客様にサービスを提供することができません。

KLab も以前は箱モノの負荷分散機を利用していたのですが、 クリティカルなバグに散々悩まされました。 この箱モノは L2処理に問題があり、 通信不良が発生するケースがあったのです。 もちろんベンダへは症状を報告していたのですが、 完全な対策には至らず、なんとか運用でカバーしていました。

これでは、いつ症状が再発するか分からず 精神衛生上もよろしくありません。 そこで、LVS (Linux Virtual Server) を使って Linux ベースの負荷分散機を 構築することにしました。 むろん、LVS のソースコードの全てを完全に把握しつくし、 LVS プロジェクトに貢献できるようになるまでには、 まだまだ道程が遠いのですが、 再現可能な障害であれば問題の所在を見つけ出せる程度の レベルには達することができていると思っています。 しかも、実はこうやって自前で構築した負荷分散機の方が、 それまで使っていた箱モノよりずっと安定して運用できてしまったのです。

ベンダの都合に振り回されないためのオープンソース

プロプライエタリなソフトウェアを使っている場合は、 ベンダがサポートを停止するリスクというのも考えておかねばなりません。 ベンダがサポートを止めたことを理由に、 弊社のお客様に対するサービス提供を止める、というやり方も 無いわけではありませんが、 技術会社を標榜する KLab としては、 あまりそういう言い訳はしたくありません。

すると、 ベンダがサポートを止めたときのことまで考えておく必要がありますが、 あいにくソフトウェアの使用許諾というのは一般に不平等契約で、 ソフトウェアを使用する側には打つ手がないことが多いようです。 ベンダの都合に振り回されるよりは、 いざとなったら自前で解決できるよう、 ソースがオープンになっているソフトウェアを選ぶ方が 結果的に楽といえるのではないでしょうか。

なんかプロプライエタリって馬鹿みたいだな」 (ここギコ!) で、

    > プロプライエタリなソフトの方がよっぽどリスクだらけちゃうの?
    > わざわざクソ高い金払うのに、と思えてくる。

という意見も出ているように、 ベンダのサポートがアテになるケースばかりとは限りません。

自由なシステム構築を実現するためのオープンソース

どんなに柔軟性が高いソフトウェアでも、 カスタマイズで可能な範囲というのはタカが知れています。 ソースを改変することによって得られる自由とは雲泥の差でしょう。

KLab としては、 他社では行なっていないような方法で、 耐故障性を向上させたり、 性能を向上させたり、 より低コストな運用を実現したり することによって、 差別化をはかっていきたいわけで、 そうなるとベンダの製品を使うよりは、 オープンソースを使うべき、という選択になります。

実際にどのようにオープンソースを活用しているかは、 DSAS開発者の部屋などで 紹介していきたいと思っておりますし、 オープンソースを活用していく過程で我々のレベルが上がって、 オープンソース界に貢献できるようになれれば、 それは我々にとって望外の幸であり、 それを目指して研鑽を積んでいく所存です。


klab_sengoku at 06:19|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)

DB サーバのセキュリティ向上策 (3)」では、 どのユーザが UNIX ドメインソケットにアクセスしたか特定するために、 ユーザごとにソケットを作成しました。 しかし Linux などの OS では、UNIX ドメインソケットに限り アクセス元のユーザを getsockopt(2) で調べることができるので、 ソケット一つだけでどのユーザからのアクセスか区別することができます。

例えば以下のように getsockopt の引数に SO_PEERCRED を指定することにより、 ucred 構造体にアクセス元のユーザの情報が格納されます:

struct ucred cr;
int len = sizeof(cr);
int ret = getsockopt(sd, SOL_SOCKET, SO_PEERCRED, &cr, &len);
if (ret == 0) {
    struct passwd *passwd = getpwuid(cr.uid);

    ...

}

したがって、UNIX ドメインソケットを listen し、 そのソケットへ接続があったら、 それを DB サーバへ通信を監視しつつ中継するプログラム dbrelay において、 上記のように getsockopt(2) を使ってアクセス元ユーザを特定し、 通信の監視によって得られた DB ユーザ名と一致したら中継を継続し、 一致しなかったら通信を遮断する、ということが可能になります。

もちろん、各ユーザが直接 DB サーバへアクセスしないよう、 dbrelay からのアクセス以外は OUTPUT チェインで通信を却下します。

このような仕掛けを、ラック内の全サーバに仕込むことにより、 各ユーザは同名の DB ユーザでのみ DB サーバへ、 UNIX ドメインソケット経由でアクセスできます。

通信の監視をクライアント側でなく、 DB サーバ側で行ないたい場合は、 クライアント側の dbrelay では アクセス元のユーザ名をサーバ側へ伝えるだけにして、 通信の監視および通信の遮断はサーバ側で行なわせることもできます。

最新版 の stone には アクセス元のユーザ名をサーバ側へ伝える機能があるので、 例えばクライアント側で次のように stone を実行します。

stone dbserver:12345/http /tmp/db.sock '\U'

「/http」の指定と「'\U'」が、ユーザ名をサーバ (dbserver:12345) へ 伝える設定です。例えばユーザ sengoku が UNIX ドメインソケット /tmp/db.sock にアクセスすると、stone はまず

Apr 14 07:54:36.809789 16384 3 5>6 73 65 6e 67 6f 6b 75 0d  sengoku.
Apr 14 07:54:36.809828 16384 3 5>6 0a 0d 0a                 ...

を dbserver:12345 へ送信し、その後は /tmp/db.sock から dbserver:12345 への 中継が行なわれます。 したがってサーバ側ではまず最初に送られてきたユーザ名を受け取り、 その後は通信を監視しつつ 12345 番ポートから DB サーバへの中継を行なえばよいわけです。


klab_sengoku at 08:13|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)

前々回(3)前回(4) と、 他人の DB パスワードを知ったユーザが、 その人になりすまして DB にログインしようとしても DBサーバへの通信を遮断する仕掛けについて説明しました。 (3) はクライアント側で、(4) はサーバ側で、 それぞれ DBサーバへの通信を監視し、 UNIX ユーザ名と、DB ユーザ名が一致しない場合は通信を遮断します。

DB サーバへの通信から DB ユーザ名を抽出する方法は、 DB サーバの種類によって異なるので、 専用のものを実装することになるのですが、 今回はその一例として MySQL 4.0.x の場合について説明しましょう。

MySQL の場合は、ソースが公開されていますし、 開発者向けにはプロトコル仕様書もあるようなので、 クライアント−サーバ間通信を完全に解析することも可能なのですが、 DBユーザ名を取り出す程度なら通信内容をダンプするだけでも 取り出し方が推測できます。

まずは手始めに通信内容をダンプしてみましょう。 どんなツールを使ってもよいのですが、 ここでは拙作 stone を使ってみます。 適当なポートで listen し、 それを MySQL サーバへ中継しつつ、 通信内容をダンプするように stone を実行します。 例えば、12345番ポートで listen し、 「-ppp」オプションを指定することによって通信内容をダンプさせ、 ホスト「dbserver」の 3306番ポートへ中継させるためには、 次のように stone を実行します。

stone -ppp dbserver:3306 12345

そして、MySQL のクライアントである mysql コマンドを実行します。 MySQL サーバに接続する代わりに、 stone が listen する 12345番ポートに接続させましょう。

mysql -P12345 -h127.0.0.1 -usengoku -pabcdefg

DB ユーザ名「sengoku」、パスワード「abcdefg」で接続します。 この時、stone の出力は次のようになります:

% stone -ppp dbserver:3306 12345
Apr  7 07:04:45.525293 16384 start (2.3a) [19635]
Apr  7 07:04:45.530733 16384 stone 3: senri.gcd.org:3306 <- 0.0.0.0:12345
Apr  7 07:05:03.405877 16384 stone 3: accepted TCP 5 from 127.0.0.1:37758 mode=3
Apr  7 07:05:03.417693 16384 3 5<6 34 00 00 00 0a 34 2e 30  4....4.0
Apr  7 07:05:03.417785 16384 3 5<6 2e 32 35 2d 73 74 61 6e  .xx-stan
Apr  7 07:05:03.417802 16384 3 5<6 64 61 72 64 2d 6c 6f 67  dard-log
Apr  7 07:05:03.417813 16384 3 5<6 00 e8 7e 00 00 2d 3a 79  ..~..-:y
Apr  7 07:05:03.417823 16384 3 5<6 75 5e 58 7e 31 00 2c 20  u^X~1.,
Apr  7 07:05:03.417833 16384 3 5<6 0c 02 00 00 00 00 00 00  ........
Apr  7 07:05:03.417844 16384 3 5<6 00 00 00 00 00 00 00 00  ........
Apr  7 07:05:03.418337 16384 3 5>6 15 00 00 01 85 24 00 00  .....$..
Apr  7 07:05:03.418374 16384 3 5>6 00 73 65 6e 67 6f 6b 75  .sengoku
Apr  7 07:05:03.418385 16384 3 5>6 00 53 4d 5c 4a 55 53 49  .SM\JUSI
Apr  7 07:05:03.418393 16384 3 5>6 57                       W
Apr  7 07:05:03.418643 16384 3 5<6 05 00 00 02 00 00 00 02  ........
Apr  7 07:05:03.418671 16384 3 5<6 00                       .

各行始めの「Apr 7 07:04:45.525293」は時刻で、マイクロ秒単位で表示しています (マイクロ秒単位まで表示するようになったのは stone 2.3a からです)。 次の「16384」はスレッドID ですが、今回は無視してもらって構いません。 最初の三行は stone のログなので無視するとして、 次の部分が MySQL サーバからクライアントへ送られた通信内容です。 「5<6」が、サーバ→クライアント方向の通信であることを示します。

Apr  7 07:05:03.417693 16384 3 5<6 34 00 00 00 0a 34 2e 30  4....4.0
Apr  7 07:05:03.417785 16384 3 5<6 2e 32 35 2d 73 74 61 6e  .xx-stan
Apr  7 07:05:03.417802 16384 3 5<6 64 61 72 64 2d 6c 6f 67  dard-log
Apr  7 07:05:03.417813 16384 3 5<6 00 e8 7e 00 00 2d 3a 79  ..~..-:y
Apr  7 07:05:03.417823 16384 3 5<6 75 5e 58 7e 31 00 2c 20  u^X~1.,
Apr  7 07:05:03.417833 16384 3 5<6 0c 02 00 00 00 00 00 00  ........
Apr  7 07:05:03.417844 16384 3 5<6 00 00 00 00 00 00 00 00  ........

MySQL のバージョン番号らしきものが送られている様子が分かります。 ここでの目的は DB ユーザ名を抽出することであり、 DB ユーザ名は、クライアント→サーバ方向に送られるはずなので、 サーバ→クライアント方向の通信は無視してしまっても構わないのですが、 先頭の「34 00」には注目しておいた方がよいでしょう。 この手のクライアント−サーバ間プロトコルでは、 先頭にこれから送るデータの長さを送信することが一般的だからです。 実際、「34 00」は十進数で言うと 52 ですが、 クライアントへ送られたデータは 56 バイトなので、 先頭 2 バイトがデータ長、次の 2 バイト「00 00」がデータの種別、 残りの 52 バイトがデータだろう、と推測できます。

続く部分が、クライアントからサーバへ送られた通信内容です。 「5>6」が、クライアント→サーバ方向の通信であることを示します。

Apr  7 07:05:03.418337 16384 3 5>6 15 00 00 01 85 24 00 00  .....$..
Apr  7 07:05:03.418374 16384 3 5>6 00 73 65 6e 67 6f 6b 75  .sengoku
Apr  7 07:05:03.418385 16384 3 5>6 00 53 4d 5c 4a 55 53 49  .SM\JUSI
Apr  7 07:05:03.418393 16384 3 5>6 57                       W

先頭 2 バイト「15 00」がデータ長であると仮定してみます。 十進数で言うと 21 で、 データ種別と推測される 2 バイトデータ「00 01」の後に 21 バイトのデータが続いています。 そして、データの中に明らかに DB ユーザ名と思われる文字列「sengoku」と そのデリミタと思われる「00」があります。 続く 8 バイトはパスワードと推測できます。 DB ユーザ名の前の 5 バイトのデータ「85 24 00 00 00」は、 固定長のデータと推測できるので、 DBユーザ名を抽出するには、 クライアント→サーバ方向のデータのうち、 最初から 10 バイト目から「00」までを取り出せば良さそうです。

もちろん実際に運用する際は、MySQL のソースないしプロトコル仕様書を 参照して確実を期するべきですが、 プロトコル仕様が公式には公開されていない DB サーバの場合でも、

  • DB ユーザ名が取り出せなかった場合は、ログに出力した上で通信を容認
  • DB ユーザ名が取り出せたが、その DB ユーザ名が DB に存在しない場合は、 ログに出力した上で通信を容認
  • DB ユーザ名が取り出せて、かつその DB ユーザ名が存在する場合は、 取り出した DB ユーザ名が正しいものとして扱い、通信の許可/遮断を行なう

などと、DB ユーザ名を正しく取り出せなかったと思われるときは とりあえず通信を容認しておいて、 後ほど DB ユーザ名の抽出方法を改訂する、という運用が可能でしょう。

なお、MySQL の場合は前述したように公式なプロトコル仕様書もありますし、 Ian Redfern 氏がソースを解析して作成したプロトコルの解説が 以下のページで公開されています。

MySQL Protocol (MySQL 3.22 〜 4.0)
http://www.redferni.uklinux.net/mysql/MySQL-323.html
MySQL Protocol (MySQL 4.1)
http://www.redferni.uklinux.net/mysql/MySQL-Protocol.html

klab_sengoku at 09:35|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)

前回は、 DB サーバへの通信を監視して、 UNIX でのユーザ権限と DB ユーザ名が一致する時に限り 通信を許可する方法について説明しました。

アクセス元となるクライアント側のマシンならば、 どのユーザがアクセスしているか容易に調べられるので、 通信の監視もアクセス元で行なった方が簡単です。

しかしながらこの方法では、 データセンタ内の全てのサーバで通信の監視を行わなければならず、 やや繁雑です。 また、UNIX でのユーザ権限ごとのアクセスコントロールを 実現する方法として、 前回は各ユーザごとに専用の UNIX ドメインソケットを用意し、 そのパーミッション設定でコントロールする方法を紹介しましたが、 当然のことながら DB アクセスを行うクライアントプログラムが UNIX ドメインソケットをサポートしていなければなりません。

DB サーバへの通信の監視をアクセス先、 つまり DB サーバー側で行うことができれば、 クライアント側は監視が行われていることを意識する必要がなくなります。 つまり前回説明した「入口規制」によるアクセス制限ですね。 クライアント側から見れば、 普通に DBサーバへ TCP 接続するだけなので、 どのようなクライアントプログラムでも利用可能でしょう。

この入口規制を実現するには、 どのユーザ権限でクライアントプログラムが動いているのか、 DB サーバ側から調べる必要があります。 しかしながら、TCP 接続ではサーバ側は送られてきた パケットを受け取るだけなので、 そのパケットを誰が送信したかまでは関知しません。 そこで、通信相手が誰なのか調べる方法を定めたのが、 RFC1413 で提案された IDENT プロトコルです。 IDENT プロトコルは、 受け取った TCP パケットに記録されている 送信元の IP アドレスとポート番号を手がかりに、 相手が誰かクライアント側へ問い合わせます。

IDENT プロトコルは、あまり使われなくなって久しいので、 まず簡単に紹介しましょう。

ホスト CLIENT からホスト SERVER の 12345番ポートへアクセスした 場合について考えます。 その接続状況は次のように netstat コマンドなどで確認できて、

SERVER % netstat
Proto Recv-Q Send-Q  Local Address  Foreign Address  State
tcp        0      0  SERVER:12345   CLIENT:45486     ESTABLISHED

この場合だと、CLIENT の 45486番ポートから SERVER の 12345番ポートへの TCP 接続が確立している (ESTABLISHED) ことが分かります。

このとき、SERVER は CLIENT に IDENT 問合せをすることによって、 CLIENT のどのユーザが TCP 接続の相手か調べることができます。

SERVER % telnet CLIENT 113
Connected to CLIENT.
45486,12345                                 … (1)
45486 , 12345 : USERID : OTHER :sengoku     … (2)
Connection closed by foreign host.

(1) が SERVER から CLIENT への問合せで、 送受信双方のポート番号の対を送信しています。 これに対し、(2) が CLIENT から SERVER への応答で、 TCP 接続の相手が「sengoku」であることが分かりました。

このように、通信相手が誰か手軽に確認できる便利なプロトコルなのですが、 相手ホストが信用できなければ当然 IDENT 応答も信じることはできません。 不特定多数のホストからの通信を受け付ける場合は、 IDENT 問合せを行なっても「正直な」応答が返ってくるとは期待できないわけで、 少なくともインターネット上ではあまり使われなくなったようです。

しかし データセンタのラック内のサーバであれば、 当然管理者が決まっているでしょうから、 全てのサーバで正しく IDENT 応答を返すように徹底することは容易です。 したがって、 IDENT プロトコルを使った入口規制を実施することができます。

まず DB サーバを、UNIX ドメインソケットでのみアクセスを受け付ける ように設定します。 このソケットは、local ユーザが勝手にアクセスしたりしないよう、 DB サーバを実行するユーザ権限でのみ読み書きできるように 設定しておくとよいでしょう。

次に、特定のポートで listen し、接続を受け付けたら この UNIX ドメインソケットへ中継するプログラムを、 DB サーバを実行するユーザと同じユーザ権限で走らせます。 この中継プログラムは、 中継する際に接続元ホストに対して IDENT 問合せを行ない、 IDENT 応答で得たユーザ名と、 通信を監視することによって得られた DB ユーザ名が 一致しない場合は通信を遮断するというわけです。

このような仕掛けにより、 クライアント側のユーザは、 仕掛けを意識することなく DB サーバにアクセスすることができます。 そして、 何かのはずみに別の DBユーザのパスワードを知り、 その DBユーザになりすましてアクセスしようとしても 通信は遮断されます。


klab_sengoku at 12:25|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)

一般に、マシン C からマシン S へのアクセスを制限するには、

(IN) マシン S でアクセスを受け付けるところで制限する「入口規制」
(OUT) マシン C でアクセスを出すところで制限する「出口規制」

の2通りの方法があります。一般にアクセス制限というと (IN) の入口規制を用いることが多いのですが、 これはアクセスを出すマシンが特定できないか、 あるいは特定はできるのだけどマシンの数ないし種類が多過ぎるためです。

例えば、マシン S へのログインを制限したい場合を考えてみましょう。 一般的にはアクセス元となりうるマシンは特定できないか、 特定できたとしても数が多いでしょうし、 そのマシンで動く OS の種類も多種多様でしょう。 アクセス元となりうるマシンの全てで、 アクセスを出すことを制限しようとするのは非現実的です。 なので普通はアクセスを受け付ける側のマシン S で クライアントの認証を行なってアクセス制限をします。

例えば ssh の場合ならどこのマシンからのアクセスであっても、 秘密鍵を持っていることを証明できるならアクセスを許可し、 そうでなければ却下します。 アクセスを出す側のマシンでは何の出口規制もなく、 アクセスを受け付ける側のマシンでの入口規制だけですね。

ところが、データセンタのラック内のマシンに限定すれば、 事情は変わってきます。 ラック内に入れてあるマシンの数は高々有限 ;) ですし、 多くの場合全てのマシンで同じ OS が動いているでしょうし、 管理の都合からいえば全てのマシンを同じチームが管理すべきでしょう。

このような特殊な環境下では、 (OUT) の出口規制も現実的な方法となります。 例えば DB サーバへのアクセスを考えると、 DB サーバは通常のサーバ認証のみであっても、 クライアント側でアクセスを出すのを制限する出口規制を設けることによって、 セキュリティを向上させることができます。

クライアント側の OS が Linux であれば、 出口規制の方法として iptables の OUTPUT チェインを使うことができます。 例えば DB サーバが 12345番ポートでアクセスを受け付けているならば、 ラック内の全マシンにおいて

iptables -N dbaccess 2>/dev/null || iptables -F dbaccess
iptables -A dbaccess -j ACCEPT -m owner --uid-owner dbuser  …(2)
iptables -A dbaccess -j DROP                                …(3)

iptables -A OUTPUT -j dbaccess -p tcp --dport 12345 --syn   …(1)

を実行しておきます。

DB サーバへアクセスを出そうとして、 DB サーバが動いているマシンの 12345番ポートへの接続しようとすると、 まず OUTPUT チェインの (1) のルールによって dbaccess チェインへジャンプします。 アクセスを出そうとしたユーザが dbuser であれば、 dbaccess チェインの (2) のルールによって通信が許可されますが、 dbuser 以外のユーザであれば、 (3) のルールによって通信が却下されます。

つまり、dbuser 以外のユーザは、たとえ DB のパスワードを知っていても、 DB にアクセスできない、というわけです。

DB にアクセスしたいユーザが増えてくると、 そのたびに iptables の設定を変更するのは面倒ですので、 DB サーバへ接続できるユーザは一つだけ (例えば dbuser) にしておいて、 そのユーザ権限で中継プログラムを動かすようにすると便利でしょう。

例えば、DB にアクセスしたいユーザ user1, user2, user3, user4 が あるとします。 まず、DB 上に同名のユーザアカウントを作ります。 次に、ラック内の全サーバにおいて、 ユーザ毎に UNIX ドメインソケットを listen し、 そのソケットへ接続があったら、 それを DB サーバへ中継するプログラム (ここでは dbrelay と呼ぶことにしましょう) を動かします。 例えば次のようなソケットをオープンすることになるでしょう。

/home/user1/socket
/home/user2/socket
/home/user3/socket
/home/user4/socket

各ソケット (あるいはソケットを置いてあるディレクトリ) は、 自分以外のユーザは読み書きできないように パーミッションを設定します。 つまり dbrelay は root 権限で起動する必要があります。 さらに、前述したように DB サーバへアクセスするには dbuser ユーザ権限で実行する必要がありますから、 各ソケットをオープンした後は、 dbuser ユーザ権限に setuid する必要があります。

そして、ここが肝なのですが、 dbrelay は DB サーバへの通信を監視し、 接続を受け付けたソケットのユーザ名と、 DB へのアクセスを行なう DB ユーザ名が一致しない場合は 通信を遮断します。

以上のような仕掛けにより、 例えばユーザ user1 は、 /home/user1/socket へ接続することによって DB サーバへアクセスできるが、 そのとき使用できる DB ユーザ名は user1 だけで、 それ以外のユーザ名で DB へアクセスしようとしても dbrelay によって 通信を遮断されることになります。 しかも /home/user1/socket は user1 以外は読み書きできません。 つまり、各ユーザは自身のユーザ名以外では (仮に他の DB ユーザのパスワードを知っていたとしても) DB へアクセスできない ということになります。


klab_sengoku at 08:39|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)

KLab で採用している DB サーバのセキュリティ向上策を説明する前に、 DB アクセスの際に SSL クライアント認証を行なう方法について説明します。

DB サーバへのアクセスにおいて SSL クライアント認証を必須とし、

(a) 開発者が (デバッグ目的等で) DB アクセスを行なう時は、 その開発者個人が管理する SSL 秘密鍵を用いてアクセスするようにし、

(b) プログラムが DB アクセスを行なう時は、 そのプログラムの実行権限でのみアクセスできる SSL 秘密鍵を 用いるようにすれば、

普通のパスワード認証よりはセキュリティを向上させることができます。 SSL クライアント認証をサポートしている DB サーバであれば、 その機能を有効にするだけで良いので、とても手軽な方法です。

ここで注意したいのは、 普通に SSL を使う (つまり SSL による暗号化のみを行なう、 あるいは暗号化に加えて SSL サーバ認証のみ行なう) ことは、 あまり意味がない、ということです。

データセンタのラック内の通信の盗聴を心配しても仕方がないわけで、 通信路を暗号化すること自体には意味はないでしょう。 また、サーバ認証は接続先が意図したサーバか確認するための手段ですが、 これもラック内で、通信相手が意図通りのサーバでないか心配しても 仕方がないですね。

SSL クライアント認証をサポートしていない DB サーバでも、 拙作 stone を使えば、手軽に SSL クライアント認証を付け加えることができます。

例えば DB サーバへのアクセスを unix ドメインソケット /path/to/socket でのみ 受け付けている場合、このソケットへのアクセス権限を DB サーバの実行ユーザ (ここでは uid が 1001 番とします) 権限に限定して、 local ユーザがアクセスできないようにしておいて、 stone を次のように実行します。

stone -o 1001 -z verify \
      -z CApath=/usr/local/ssl/certs \
      -z key=/usr/local/ssl/private/db.pem \
      /path/to/socket 12345/ssl

「-z verify」が SSL クライアント認証を必須とするためのオプションです。 「-z CApath=/usr/local/ssl/certs」オプションで、 CA の証明書を置いてあるパスを指定します。

すると、その CA が署名した SSL 証明書に対応する秘密鍵を 持っているクライアントが、その SSL 証明書を提示して ポート 12345 番に SSL 接続してきた時のみ、 stone はそれを /path/to/socket へ中継します。

CA が署名した SSL 証明書ならなんでも OK とするのではなく、 特定の CA の特定の証明書のみを受け付ける場合は、

stone -o 1001 -z verify \
      -z CApath=/usr/local/ssl/certs \
      -z key=/usr/local/ssl/private/db.pem \
      -z depth=1 \
      -z re1='/CN=KLAB Root CA[/$]' \
      -z re0='/CN=dbuser[0-9]*[/$]' \
      /path/to/socket 12345/ssl

などのように、SSL証明書の発行対象の名称 (CN) を特定するための 正規表現 (この例では「/CN=dbuser[0-9]*[/$]」) を指定します。

なお、ここでいう証明書は、いわゆる「オレオレ証明書」で構いません。 つまり DB サーバの管理者が必要に応じて何枚でも独自に発行できます。

「オレオレ証明書」が問題となるのは、認証する側が認めていない CA が 証明書を発行する場合です。 例えばサーバ認証を行なう場合は、認証する側は WWW ブラウザなどになります。 WWW ブラウザのユーザが認めていない CA を勝手に立てて証明書を発行し、 ユーザにきちんと説明することなくその証明書を受け入れることを 強要すべきではありません。これがいわゆる「オレオレ証明書」です。

一方、クライアント認証の場合は、認証を行なうのはサーバ側であるので、 サーバの管理者が認める CA ならばなんでも構いません。 もちろんサーバの管理者が独自に立てた CA で OK です。

上記の例では、KLab で立てた「KLAB Root CA」が発行した証明書で、 かつその発行対象の名称 (CN) が「dbuser」+ 0桁以上の数字 の場合 のみ接続を受け付けます。

DB へアクセスする必要がある開発者と、DB へアクセスするプログラム それぞれに別々の証明書を発行すれば、DB 側で 誰からのアクセスか特定することが可能になります。

しかしながら、

(1) プログラム用の秘密鍵を誰が管理するのか?

(2) SSL クライアント認証にともなう負荷増大

という問題が残ります。(2) はコストを度外視すれば済むので、 高いパフォーマンスが要求されない場合は問題とならないかも知れません。 が、(1) はなかなかやっかいです。

プログラムの開発者は、プログラムの実行権限で読むことができるファイルは 何でも読めます。例えば、秘密鍵を読んで特定の場所へコピーするよう プログラムを改変することは至って簡単でしょう。 したがって、プログラム専用の秘密鍵というのは実は 開発者全員で共同管理している秘密鍵と大差ありません。

プログラムの開発者なら誰でも DB にアクセスできる、 という状況を許容するなら、わざわざクライアント認証のような 負荷の高い方法を選択しなくても、と思うのが人情です。

ではどういう方法がよいでしょうか?

(続きは次回に)


klab_sengoku at 08:03|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)

KLab が運用しているコンテンツで使用している DB サーバは、
パスワードを知っているだけではアクセスできません。
どういう仕掛けになっているかの説明は後のお楽しみ、ということで
まずは前振りから...

パスワードというのは知る人が多くなればなるほど漏れるものですし、
ひとたび漏れてしまえば、どこまで漏れるかコントロール不能です。
したがって DB に限らず、KLab ではパスワードへの依存を
できる限り減らしています。

例えば、サーバへのログインは、必ず ssh の RSA 認証を使うことを必須とし、
コンテンツ管理のためのページでは SSL クライアント認証を行なっています。
つまり、秘密鍵を持っている人のみがアクセスできるようにしておいて、
秘密鍵自体は各人の責任において管理してもらう、という方式です。
万一、サーバへ不正なアクセスが行なわれたら、
誰の秘密鍵によってアクセスされたかログが残りますから、
誰の責任か明確になるわけです。

ところが、プログラムが DB サーバなどへアクセスする場合は事情が
変わってきます。まず、

(1) プログラムには責任を負わせることができない ;-)

そのプログラムを開発したり運用したりする人が、
秘密鍵を管理するしかありませんが、
秘密鍵というのはあくまで一人の個人が管理するからこそ
責任を負わせられるのであって、
共同管理ということにしてしまっては、
万一漏れた時に、どこから漏れたのか調べようがなくなります。

かといって、そのプログラムが動作する時に用いる鍵の管理を、
一人の個人が管理するルールにしてしまうと、
運用がとても大変になります。
障害が起きた時に、その人がいなければ原因究明もままなりません。

二番目の問題として、

(2) DB アクセスには高いパフォーマンスが要求される

人がサーバ等へログインするときは、所詮は人間のスピードですから、
大したレスポンススピードは必要ありません。
秘密鍵による認証を行なう余裕は充分にあります。
一方、Web アプリケーション等のプログラムが DB サーバへアクセスする場合は、
ページのヒット数が高ければ高いほど、高いパフォーマンスが要求されます。

コネクションをプールするなどの手法によって、
認証コストを下げることは可能であるものの、
プログラム−DBサーバ間の通信路の暗号化などを行なっていては、
暗号化処理のぶんだけサーバ負荷が余計にかかります。
つまり DB サーバへのアクセスに SSL クライアント認証を行なう、
などの方法は、なるべくなら避けたいところです。

ではどうすればいいでしょうか?
(続きは次回に)


klab_sengoku at 11:20|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)
このエントリーを含むブックマーク 2006年03月31日

昨日に引き続き、これも tech ML で流した IPv6 ネタですが...

KLab のイントラのサーバである kamiya で、

ping6 -I eth0 ff02::1

を実行してみると、20台程度のマシンが反応します。うち、半分くらいは、 私が IPv6 をインストールしたマシンだったりします。 Linux や WindowsXP は標準で IPv6 をサポートしてますし、 Windows2000 も IPv6 Technology Preview を使えば IPv6 が使えます。興味がある人は試してみては? 今まで鳴かず飛ばずだった IPv6 ですが、なんとなく いろいろ使えそうな予感がします。 いろいろな仕掛けを IPv6 へ移行中...

# ついでに言うと stone も、IPv6 をサポートしています

六本木LAN の kamiya からフツーに IP で、私の自宅サーバ asao.gcd.org へ ping を打って、

kamiya:/home/sengoku % ping -t 64 asao.gcd.org
PING asao.gcd.org (60.32.85.216) from 10.10.0.2 : 56(84) bytes of data.
64 bytes from gcd.org (60.32.85.216): icmp_seq=1 ttl=50 time=6.55 ms

asao.gcd.org 側で見ると、

asao.gcd.org:/root # tcpdump -v -i ppp0 icmp
tcpdump: listening on ppp0, link-type LINUX_SLL (Linux cooked), capture size 96 bytes
09:34:55.115600 IP (tos 0x0, ttl  50, id 0, offset 0, flags [DF], length: 84) 161.90.128.210.bf.2iij.net > asaogw.gcd.org: icmp 64: echo request seq 256

64 に設定した ttl が 50 まで減っています。つまり 14 hop あるということ ですね。ping パケットは

六本木LAN → PPPoE (IPv6網) → IIJ (6 hop) ─┐
                                             ↓
                                           MFEED
                                             │
  自宅LAN ← PPPoE (IPv6網) ← OCN (7 hop) ←┘

と延々と旅をしてますし、しかも IPv6網は PPPoE でトンネリングして しまっているので、IPv6網での物理的な hop 数はカウントされていません。 実質的には合計で 20 〜 22 hop 程度はあると考えるべきでしょう。

一方 IPv6 で asao.gcd.org へ ping を打つと、

asao.gcd.org:/root # tcpdump -v -i br0 icmp6
tcpdump: WARNING: br0: no IPv4 address assigned
tcpdump: listening on br0, link-type EN10MB (Ethernet), capture size 96 bytes
09:37:10.664278 kamiya.v6.klab.org > asao.v6.gcd.org: icmp6: echo request seq 256 (len 64, hlim 60)

hlim が 60 までしか減ってません。つまりわずか 4 hop ですね。

六本木LAN → IPv6網 → 自宅LAN

しかも途中に PPPoE のような邪魔なものは入っていないので、 mtu は 1500 のままです。


klab_sengoku at 08:38|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)
このエントリーを含むブックマーク 2006年03月30日

一年以上前に tech ML で取り上げたネタなのですが、現在よく使われている Linux ディストリビューションでも glibc 2.3.2 あたりが使われることもある ようなので紹介します。


KLab のイントラのサーバには、IPv6 なアドレスも割り当ててあります。 例えば、

% host kamiya.v6.klab.org
kamiya.v6.klab.org has IPv6 address 2001:c90:c1c:100e:2e0:81ff:feab:cdef

% host 2001:c90:c1c:100e:2e0:81ff:feab:cdef
f.e.d.c.b.a.e.f.f.f.1.8.0.e.2.0.e.0.0.1.c.1.c.0.0.9.c.0.1.0.0.2.ip6.arpa domain name pointer kamiya.v6.klab.org.

のような感じ。kamiya というホスト名は KLab が六本木ヒルズへ移転してくる 前は、神谷町にオフィスがあったことにちなんでいます。イントラのサーバ群に は地名がつけられているマシンが多く、もちろん roppongi というホスト名の マシンもあります。

で、当時は Linux サーバの多くは glibc 2.2 を使っていたのですが、一部の マシンは glibc 2.3 にバージョンアップしていました。ところが、glibc 2.3 な マシンから ping6 を打ってみると異様に遅い...

% time ping6 -c 3 kamiya.v6.klab.org
PING kamiya.v6.klab.org(kamiya.v6.klab.org) 56 data bytes
64 bytes from kamiya.v6.klab.org: icmp_seq=1 ttl=64 time=1.10 ms
64 bytes from kamiya.v6.klab.org: icmp_seq=2 ttl=64 time=0.563 ms
64 bytes from kamiya.v6.klab.org: icmp_seq=3 ttl=64 time=0.363 ms

--- kamiya.v6.klab.org ping statistics ---
3 packets transmitted, 3 received, 0% packet loss, time 20022ms
rtt min/avg/max/mdev = 0.338/0.475/0.569/0.102 ms
0.006u 0.004s 0:40.04 0.0%      0+0k 0+0io 0pf+0w

3 発 ping を打つだけなのに 40 秒もかかっています。-n オプションを 指定して、逆引きを抑制すると、

% time ping6 -nc 3 kamiya.v6.klab.org
PING kamiya.v6.klab.org(2001:c90:c1c:100e:2e0:81ff:feab:cdef) 56 data bytes
64 bytes from 2001:c90:c1c:100e:2e0:81ff:feab:cdef: icmp_seq=1 ttl=64 time=0.981 ms
64 bytes from 2001:c90:c1c:100e:2e0:81ff:feab:cdef: icmp_seq=2 ttl=64 time=0.354 ms
64 bytes from 2001:c90:c1c:100e:2e0:81ff:feab:cdef: icmp_seq=3 ttl=64 time=0.273 ms

--- kamiya.v6.klab.org ping statistics ---
3 packets transmitted, 3 received, 0% packet loss, time 2002ms
rtt min/avg/max/mdev = 0.273/0.536/0.981/0.316 ms
0.003u 0.004s 0:02.02 0.0%      0+0k 0+0io 0pf+0w

などとフツーに 2 秒程度で終わるので、DNS の逆引きに問題があることが 分かります。一回の逆引きに 10 秒ほどかかっているようです。 てっきりネームサーバの設定の問題かと思ったのですが、host コマンドや dnsqr コマンドを使う限り、このような遅れは生じません。ping6 をはじめ、 glibc の getnameinfo(3) を使う場合だけ遅延が発生します。

後で気づいたのですが、この問題が起きるのは glibc 2.3 だけで glibc 2.2 では起きません (つまり kamiya とかでは正常に ping6 できる)。また、 当然ながら glibc 2.3 でも IP の逆引きは正常で、問題なのは IPv6 の逆引き だけです。

# 後述するように問題があるのは glibc 2.3.3 までで 2.3.4 は問題ありません こーいうときは tcpdump が基本だよね、つーことでパケットダンプしてみると、 getnameinfo(3) の場合は、

\[x20010c900c1c100e02e081fffeabcdef/128].ip6.arpa.

というクエリがまず飛び、10 秒ほどたってタイムアウトした後に

f.e.d.c.b.a.e.f.f.f.1.8.0.e.2.0.e.0.0.1.c.1.c.0.0.9.c.0.1.0.0.2.ip6.arpa.

というクエリが飛ぶことが分かりました。前者は見慣れない形式だったのですが、 「Binary Label」ないし「Bit-String」などと呼ばれる形式のようです (ちなみ に後者は nibble 形式)。「Binary Label」は、ドメイン名の一形式として RFC1035 で規定され、DNS での使い方が RFC2673 で決められたにもかかわらず、 ネームサーバでサポートされなかったために、RFC3363 で IPv6 の逆引きの方法 としては、使うのを断念されてしまった不幸な形式のようです。

とはいえ、「DNS で、どーして上位バイトが先にくるんだ〜 実装のこと何も 考えてないな〜」と脊髄反射的に拒否したくなる、頭悪い (brain damaged) 形式なので、断念されて幸い、ということもできますね。

2002年8月に RFC3363 で正式に断念された形式なら、そのまま人々の記憶から 忘れ去られて欲しかったのですが、何を血迷ったか、glibc 2.3 は IPv6 の 逆引きで、まず「Bit-String」クエリを試し、タイムアウトしたら「nibble」 クエリを送信するという実装になっています (glibc の resolv は BIND 由来 だから?)。

少なくとも 2004年8月3日に公開された glibc 2.3.3 では Bit-String が デフォルトのままですね。一刻も早く Bit-String が使われなくなることを 願ってやみません。

願ってるだけではアレ (^^;) なので、ソースを見てみると、 glibc-2.3.3/resolv/nss_dns/dns-host.c (2003年10月26日) では

case AF_INET6:
  /* XXX Maybe we need an option to select whether to use the nibble
     or the bitfield form.  The RFC requires the bitfield form so
     we use it.  */

って書いてありますね (Maybe って書くくらいならオプション指定できるように しろよ...)。これが glibc-2.3.4/resolv/nss_dns/dns-host.c (2004年10月25日) だと

case AF_INET6:
  /* Only lookup with the byte string format if the user wants it.  */
  if (__builtin_expect (_res.options & RES_USEBSTRING, 0))
    {
      qp = stpcpy (qbuf, "\\[x");
      ...

に修正されています! つまりデフォルトでは nibble 形式に変更されたんです ね。めでたしめでたし。さっさと glibc 2.3.4 (2005年1月26日) に上げよっと。

...と書いてる間に自宅マシンで 2.3.4 を make して install してみました。 無事、getnameinfo(3) が遅延なく IPv6 の逆引きができるようになりました。 メール書いているうちに自己完結してしまったわけですが、まあ何かの参考に なるかも知れないし、IPv6 に興味を持ってくれる人が増えるといいな、 ということで tech に投げておきます。

#12237                                                          仙石 浩明
http://www.gcd.org/sengoku/             Hiroaki Sengoku <sengoku@gcd.org>

klab_sengoku at 13:29|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)
プロフィール
2000年、KLab株式会社取締役CTOに就任。1995年以来、TCP/IPパケットリピータ「stone」や、Palm上の時刻表ツール「Time Table Viewer」などを開発・発表する。また、堅牢で安定したサイトgcd.org を運営し、会員にサービスを提供。そこで得たサーバー構築ノウハウを日経Linuxで2000年4月から2年間連載
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