2007年05月
技術者の成長に役立つ会社とは?(1)
をとても多くの方々に読んで頂けました。
頂いたコメントや、
はてなブックマークに頂いたコメントを見ると、
賛同/批判 両方の立場から様々なご意見がありますね。
拙文が多くの方々の考えるきっかけになったのだとすれば、
書いた甲斐があるというものです。
特に学生さんにとっては、これから自身の人生を切り拓いていくのですから、
いま自分の将来について考えることは、
必ず後の人生にとってプラスになることでしょう。
以下に述べるのは、私が考える「技術者の成長に役立つ会社」の条件です。 他の人は異なった考えを持つかもしれませんし、 私自身も常に考え続けているので、 「役立つ会社」の条件が変ってくることがあるかも知れません。 しかし、 「技術者の成長にとって一番役に立つ会社を目指したい」というその思い自体は、 私が技術の責任者であり続ける限り、変らず持ち続けたいと思っています。
成長を邪魔しない会社
エラソーに「技術者の成長に役立つ会社」の条件と言っておきながら、 最初の条件が「邪魔しない」かよ、 えらく後ろ向きな条件だな、 という非難の声が聞こえてきそう (^^;) ですが、
上司は思いつきでものを言う(新書)
橋本 治 (著)
にも書かれているように、
会社は上司のピラミッドを骨格として、現場という大地の上に立っている。 「上から下へ」という命令系統で出来上がっていて、 「下から上へ」の声を反映しにくい。 部下からの建設的な提言は、 拒絶されるか、拒絶はされなくても、 上司の「思いつき回路」を作動させてしまう。
ということは、極めてありがちなのではないかと思います。 つまり、上司は体面を保つ必要がありますから、 部下に接するとき、 部下の良いところを誉めるだけではなく、 つい「粗探し」をして一言追加したくなるものだと思います。
だって、部下のことを 100% 肯定するだけでは、 上司の存在価値が危うくなりますからね〜。 なにか部下の至らない点を無理矢理にでも見つけ出して、 教訓めいたことを言って上司の威厳を保ちたくなるものでしょう。
もちろん、部下の狭量な考えを正すために、 いろんな意見を言ってやることが必要なケースもあるでしょう。 「思いつきで」言うことが全て悪いと言うつもりもありません。 しかし、 部下の短所を矯正することばかりに熱中していては、 部下が技術者として成長することを妨げることになりかねません。 例えば、
キミは技術は優れているんだが、 もうちょっと仲間とうまく仕事をやっていくよう努力してもらえんかね? キミも社会人なんだから学生気分は早く捨てて、 チームワークを重視して仕事してもらわんと困るよ。
なんて言ってないでしょうか? 技術が (おそらく上司よりも) 優れている部下に対し、 その得意な技術をもっと伸ばすことよりも、 その部下がニガテとしていること、 例えばコミュニケーション能力を 「人並みに」身につけることを優先するよう要求してしまうわけです。
「感情的コミュニケーション」は、 若いうち (例えば 30歳前半まで) は手を出さないようにして欲しい コミュニケーション能力である。 特に研究者や技術者を目指そうとする若い人たちには、 周りの人がどう思うかなんかは気にせず、 (「空気嫁!」などの罵倒は無視して) 我が道を進んで欲しい。
コミュニケーション能力なんて、 歳をとって頭が固くなってからでも充分身につけることができます。 そもそも技術者にとって「人並み」のコミュニケーション能力なんて、 どれほどの価値があるというのでしょう? 技術者としての成長を考えるなら、 若いときにしか学べない「技術の本質」を身につけることこそ、 優先すべきではないでしょうか。
以上は、積極的に「成長を邪魔する」ケースですが、 以下のように、消極的に「成長を邪魔する」ケースも、 ありがちなのではないかと思います。
すなわち、 技術者の成長を第一に考えるのなら、 それぞれの技術者が自身の能力をフルに発揮して、 得意なことをとことん伸ばすことができるような 活躍の場を与えるべきだと思うのですが、 現実の会社だとそういう「適材適所」は、 なかなか難しいケースが多いかも知れません。 適切な活躍の場を与えないというのは、 成長を邪魔しようと意図しているわけではないにせよ、 結果として邪魔しています。
例えば、 新入社員がある特定の分野において素晴らしい能力を持っていたとしても、 その分野の業務に先任者がいたらどうでしょうか? その先任者を異動させてまで、 新人にその分野の業務を任せる、 という会社は多くはないでしょう。 むしろ、 新人が何が得意か検討して配属先を決めるというよりは、 人が足らない部署への配属を優先する会社の方が 多数派であるような気がします。
さらに言えば、 配属後も新人には雑用ばかりをやらせ、 能力を発揮できる仕事を任せない、 なんてこともあるのではないでしょうか。 上司と同様、 先輩にもメンツというのがありますから、 たとえ後輩の方が能力が高かったとしても、 それを素直に認めて立場を逆転させる (つまり先輩が新人の指示に従う) よりも、 新人の至らない点を無理矢理にでも見つけ出すことに熱中し、 雑用を押し付けることに終始してしまうものなのかも知れません。
会社ってのは、 部下や後輩の技術者の成長を邪魔してしまえ、とささやく誘惑に満ちています。 私自身、そういう誘惑に負けそうになることが全く無いと言えば嘘になります。 部下や後輩の技術者の成長を邪魔していないか、 常に自省し続けることこそ、 「技術者の成長に役立つ会社」の第一の条件と言えるのではないでしょうか。
技術者を「技術そのもの」で評価する会社
技術者が邪魔されずに成長できたとしても、 その成長を「技術そのもの」できちんと評価してあげられなければ、 片手落ちです。 技術的に成長したら成長したぶんだけ、 きちんと評価されて給料が上がる、 こうしてはじめて、 技術的に成長しようという意欲が継続するのだと思います。
こういう話をすると、 なぜ技術的に成長したからといって給料を上げる必要があるのか、 と思う人がいるかも知れません。 会社は技術者養成機関ではありませんから、 能力ではなく成果に対して報酬を支払いたい、 と思う人が出てくるのは当然でしょう。 では、「技術者の成果」とは何でしょうか?
「技術者の成果」とは何でしょう?
技術者が作ったものから得られる売上でしょうか? もちろん、それだけではないですよね? 「青色LED」のように最終的に莫大な利益を生み出したものは、 とても分かりやすい「成果」ですが、 サーバシステムの運用などのような縁の下の力持ちの仕事だって立派な成果ですし、 さらに、自分自身では何も生み出さなくても、 社内の技術者を育てることや、 社内の技術をブログなどで発表して会社の知名度を上げることなども、 立派な成果と言えるでしょう。技術者を目指す学生さんたちへ から引用
技術者という人材を「人財」すなわち会社の資産と考えるのであれば、 技術者の成長とは、「人財」の価値の増加、 すなわち会社の資産の増加を意味します。 売上は単にそのとき限りのフローに過ぎませんが、 技術者の成長はストックとなるわけです。 会計数字には現われにくいので見落とされがちなのですが、 技術者自身の成長こそ、 本来は最も評価されるべき「成果」と言えるのではないでしょうか。
しかしながら、 技術者の成長を「技術そのもの」で正当に評価することは、 容易ではありません。 「技術そのもの」で評価しようとすれば、 その技術分野の概要を理解している程度では全くダメで、 いざとなったら部下の仕事を代行できるくらいの技術力が、 評価する側に求められます。
もちろん、 いろんな得意分野を持つ部下たち全員において、 その仕事を完全に代行できることを上司に求めるのは無理な話でしょう。 部下全員の技術力のスーパーセットの技術力を上司の条件にしていては、 上司のなり手がいなくなってしまいます。
かといって、 半期ないし一年における部下の技術面での成長が、 どのくらい優れたものといえるのか評価できなければ、 つまり毎回「よくできました」「もっとがんばりましょう」などの 概要評価ばかりでは、 部下のモチベーションが下がってしまうことでしょう。 まして、技術面で部下の能力を評価するのを放棄して、 部下の関わったプロジェクトの売上高をそのまま部下の評価としていては、 技術的に成長しようというモチベーションを持続させることは不可能でしょう。
給料の一部が売上 (ないし利益等) に連動する、 ということはあってもいいとは思いますが、 技術力に連動する部分もあるべきで、 技術的に大きく成長したときはきちんと給料に反映させ、 あまり成長できなかったときは何が足らないのか、 きちんと指摘してあげるべきだと思うのです。
それには、 部下それぞれの得意分野について、 パフォーマンスの観点では部下に劣ることがあったとしても、 少なくとも技術内容の理解の観点では勝るとも劣らないことが 重要ではないでしょうか。
もちろん、これとて容易なことではありません。 部下が極めて優秀な場合、 その技術的背景をマトモに理解するには大変な労力が必要となるかも知れません。 つい、技術で評価するのを放棄して、 技術とは関係ない点を持ち出したくなるものだと思います。 しかし、 いくら大変でも、いくら時間がかかっても、 部下の技術を一生懸命理解しようとすることが重要だし、 理解しようと努力し続けてはじめて、 「技術力ではないところで部下を評価してしまえ」という誘惑に 打ち克つことができるのではないでしょうか。
得意分野を見つける余裕がある会社
現在の仕事が自身の得意分野に一致していて、 かつその仕事が好きであれば、 技術者にとってそれは理想的な仕事と言えるでしょう。
一生の時間のうちのかなりの時間を仕事に費やすのですから、 一生かけて取り組みたいと思うようなことをすべきだと思うのです。 好きなことをやっててお金がもらえれば苦労はしない、 と多くの人は言うでしょう。 でも、本当に一生かけてもやりたいほど好きなことってありますか?面接 FAQ (4) から引用
しかし、 「やりたいこと」そのものズバリを、 最初に就職したときから仕事として やり続けてきた、 という人は少数派でしょう。 (私を含めて) 多くの人は、 いろんなことをやっているうちに、 「これだ」という仕事に出会い、 それにのめり込んでいくものなのではないかと思います。
あるいは、 今の仕事が一番自分に向いていると思っていたとしても、 なにかのきっかけで他の分野のことをやってみたら、 その分野のほうが魅力的であると感じ、 どんどん引き込まれてやっているうちに、 そっちのほうが自分に向いていることに気づく、 なんてこともあるかも知れません。
だから、 本業以外にも、 業務と関係ないことでも、いろいろ挑戦して欲しいと思っています。 ふとしたきっかけで始めたことが、 もしかすると自身の隠れた才能が開花することに 繋がるかも知れないのですから。
本業以外に熱中できる新分野を見つけた部下に対し、 「新分野を頑張るのはいいけど本業も忘れずにね」という忠告はするけど、 その新分野への取組みも大いに応援する、 KLab(株)はそんな会社でありたいと思っています。 勤務時間の 10% は本業以外のことを好き勝手にやっていい、 もし見込みが出てきて周囲から認められるレベルになったら、 それを本業にしてしまってもいい、 という「どぶろく制度」を作ったのも、 熱中できることを見つけるチャンスを逃して欲しくない、という思いからです。
本業の完璧な遂行もいいのですが、 自身の能力を最も発揮できる分野は一体何なのか考える余裕は持って欲しいですし、 技術者それぞれが最も自分に向いている仕事に出会えるように手助けすることこそが、 技術者のための技術会社の存在意義なのではないかと思います。
ひろのぶさん、けいこさん、ご結婚おめでとうございます。
ご両家、ご親族の皆様、本日はまことにおめでとうございます。
どうぞ、おかけになって下さい。
私はひろのぶさんの勤務先であるKLab株式会社で 技術の責任者を勤めている仙石と申します。
ひろのぶさんは、 KLab株式会社で技術者として働いているわけですが、 技術者と言っても当然いろいろな職種があるわけで、 ひろのぶさんはシステム管理者と呼ばれる役割を担っています。
普通の方々にとっては、 「システム管理者」というのは馴染みのない言葉かも知れません。 「管理者」というと管理職のことを思い浮かべるかたも多いかもしれませんが、 管理する対象は人間ではなくてコンピュータのシステムということになります。 平たく言えば、たくさんのコンピュータがきちんと動くよう見張る仕事です。
縁の下の力持ち的な仕事で、ある意味とても地味な仕事といってもよいでしょう。 コンピュータが正常に動いている限り、システム管理者とは空気のような存在で、 ともすると存在を忘れられがちになります。
そしてシステム管理者に注目が集まるのは、 コンピュータにトラブルが起きたときです。 何やってんだ、早よ直せ!そういう罵倒がシステム管理者に向けられます。 仕事がうまくいってコンピュータがきちんと動いているときは空気のように忘れられ、 失敗してコンピュータにトラブルが起きたときは非難の矢面にさらされる、 なんとも損な役回りであります。
だから、システム管理者を目指そうとする人は、 世間一般で言うと、そんなに多くはない。 さらに、技術を磨いてより高いレベルのシステム管理者を目指そうという人は、 よほどの変わり者といってもいいかもしれません。
でも、逆に言うと、レベルの高いシステム管理者というのはとても貴重な存在、 ということになります。 私の感覚で言うと、一人前のシステム管理者は、おそらく全国に 1000人もいない。 何十万人もいるコンピュータ技術者の中で、たった 1000人です。 割合で言うと 1% よりもずっと少ない。 そういう稀有な人材の一人が、ひろのぶさんというわけです。
そういう貴重な人材だからこそ、 もっとシステム管理者の地位を向上させたい、 トラブルが起きたときだけでなく、システム管理者がいい仕事をしたとき —つまりコンピュータがいつもどおり動いているということなので、 あまり華々しさはないのですが— そういうときにも、 システム管理者がきちんと評価されるような、 そういった会社でありたいと思っています。
コンピュータが順調に動いているとき、 システム管理者は 一見、なにもしていないようにも見えてしまうのですが、 実際には、トラブルを未然に回避すべく、 いろんな創意工夫をシステムに盛り込もうとしています。 あるいはシステムに普段と違う様子がないか コンピュータの動作を常に気にかけています。 少しでも違った気配があったりすると、 とても心配して、気が気でなかったりします。
これはもう「愛情」と言ってしまってもいいかもしれません。
コンピュータのような無機物を「愛する」なんて言うと、 変人扱いされてしまいかねない今日このごろなのですが、 モノに対する愛を変なものと考える昨今の風潮は、 いかがなものかと思います。
古来から日本人は万物に霊が宿っていると考え、 様々なものを愛でてきました。 命あるものだけでなく、 そのあたりの石ころや、あるいや刀や兜など、 そういったものにも魂が宿っていると考え、 愛してきたのです。
そういうモノに対する愛が、 工芸品などの高い技術をはぐくんできたのだと思います。 現在、コンピュータに関する技術で日本は米国など諸外国に 大きく遅れをとっているわけですが、 その原因の一つは、 そういったモノに対する愛を忘れてしまったからなのかもしれません。 コンピュータだってソフトウェアだってもっと愛すべきだと思いますし、 そういう心が高い技術を生み出すのだと私は思います。
まとめますと、システム管理者の仕事というのは、 日ごろからコンピュータの具合に気を配り、 愛情を持って接し、 平穏な日常を最大の目標としつつ、 創意工夫を盛り込むことを忘れない、 そういう仕事です。
こうしてみると、システム管理ってのは、 円満な家庭を築くのと驚くほど共通点が多いのではないかと思います。
そういえば、 弊社においてもシステム管理者ってのは愛妻家が多いような気がします。
あ、もちろん、他の職種の人の家庭が円満ではない、と 言っているわけではないです、念のため。
優秀なシステム管理者であるひろのぶさんなら、 きっと素晴らしく円満かつ幸せな家庭を築いていける、、 そんな気がします。
というわけで、 なんとか無事、 お話が結婚のお話に結びついたところで、 お祝いの言葉とさせていただきます。
本日は誠におめでとうございます。

