2006年12月

私が大学を卒業したのはバブル (ネットバブルではなく、その前の前世紀のほう) がはじけた年でした。 当時は今ほどベンチャーは一般的ではありませんでしたし、 研究職を目指していた学生 (含む私) が就職先として大企業の研究所を選ぶのは、 ごく普通のことだったのではないかと思います。 終身雇用を信じていたわけでもありませんでしたが、 かといって自分自身が転職することになろうとは、 あまり考えてもいなかったような時代です。 今から振り返ってみれば「就職」というよりは「就社」という感覚に 近かったのだと思います。

その後の「失われた十年 (20年?)」の間に、 年功主義の綻びが誰の目にも明らかになってきて、 大企業以外の就職先を選ぶ人も増えてきましたし、 転職も一般的になってきました。 とはいえ、 就職先の選択肢が広がってきているわりには、 それぞれの企業がどんなところか実態を知ること無く、 なんとなくイメージで決めてしまっている学生さんも多いのではないでしょうか。 最近になって再び「寄らば大樹」的な傾向が復活しつつあるとも聞きます。

どのような進路を選ぶにせよ、 もっと企業の実態を知ってもらった上で決めて欲しいと 思っていたところ、 先日たまたまそういう機会を頂けたので、 学生さん相手のセミナーでお話ししてきました。

私は大企業の研究所に 8年間勤め、 その後ベンチャー (KLab(株), 当時の社名は (株)ケイ・ラボラトリー) の 立ち上げに参加し、順調に規模を拡大し、現在に至っています。 なので、

  • 大企業の研究所 (前職)
  • スタートアップ (立ち上げ当初のケイ・ラボラトリー)
  • 中規模ベンチャー (現在の KLab)

それぞれについて、実地の体験談をお話したわけです。 幸い、ベンチャーについて、もともと興味を持っていた学生さんもいて、 核心をついた (答えにくいとも言う ^^;) 質問もありました。 大企業とベンチャー、 それぞれの実態について理解を深めてもらえたと思っています。

まじめな東大生、悩みすぎ? 3割がニート不安

よく勉強する半面、将来の進路などに思い悩み、 不安や無気力に苦しむ学生が増えている−。 東大が13日公表した学生生活実態調査で、 こんな東大生の姿が浮かび上がった。
調査は昨秋、学部生約3500人を対象に実施(回収率39%)。 83%の学生が進路や生き方に悩んでおり、 自分がニートやフリーターになる恐れがあると感じている学生も28%に上った。
今朝のSankei WEBから引用

悩んでいるより、まずはいろいろな企業の実態について 見聞きしてみて、じっくり将来のことを考えて欲しいと思います。 私でよければ喜んでお話ししますので、 興味あるかたは是非ご連絡下さい。 ただし、企業の実態をできるだけ正確にお話しする、という主旨なので、 対象は (研究者・技術者を目指す) 学生さんに限定させて頂きたいと思います。

参考までに、セミナーで使ったスライドを FlashPaper で Flash 化したもの ↓ を公開します。 このスライド自体は 10ページしかありませんが、 それは「実態」は口頭でお話ししているからです ;-p。 質疑応答が盛り上がったので、2時間近くかかりました。

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人月見積りでは生産性が上がらない。 IPA が警告するまでもなく、 ソフトウェア技術者ならば誰しも 人月見積りに嫌悪感を持っているのではないでしょうか。 生産性を上げれば上げるほど金額が低くなってしまうし、 そもそも開発者の生産性なんて人によって大きく異なる (私の持論は、 「ピンとキリでは 1000倍の差がある」、です) のだから、 「標準的な技術者一人が一ヶ月かかる仕事」なんて基準をおいたところで 意味がありません。

人月見積もりについては、 「人月見積もり、生産性について」に いろいろな意見へのリンクがまとめられているので参考になります。 このように人月見積もりがなぜ問題なのか、 それこそ掃いて捨てるほど主張が繰り返されていますから、 いまさら同じようなことを唱えても仕方がありません。 そこで、ここでは逆にあえて肯定してみることにします。

そもそもこれだけ嫌われ者の「人月見積もり」が なぜいまだに行なわれているか、 そこには「人月見積もり」ならではの「良さ」があるからではないでしょうか?

誰にとっての「良さ」か? それはもちろん見積書を受取る「お客様」にとっての 良さです。 そもそも技術者の仕事なんてのは、 技術のことを知らない「お客様」にとってはよくわかりません。 「この仕事はすごく高度なんだぞーっ」って言われたって、 「ハイそうですか、じゃ沢山お金を払いますね」なんて言ってくれるお客様が いたらぜひお目にかかりたいものです。 ふつうは「どれだけ価値がある仕事なのか、きちんと説明してもらいたい」って 言うでしょう。

じゃ、どうやって説明しましょうか、技術者の仕事の価値を。

お客様にどう説明すれば納得してもらえるか考えるには、 お客様の立場に立つのが一番分かりやすいでしょう。 といっても、我々技術者にとっては、技術者でない人の気持ちを想像するのは ちょっと難しいですよね? こういうときの常套手段として、立場を逆にして考えてみます。 つまり我々技術者がお客で、 技術者でない相手が何かを我々に売りつけようと見積書を出している 状況を想像します。 売り付けるモノは (コモディティでなければ) 何でもいいんですが、 例えば何かの調査レポートにしましょうか。

相手は、このレポートがいかに創造的で革新的で価値があるものであるか、 必死に説明しようとしています。 が、残念ながら我々はその分野には全く疎いので、 どれだけ価値があるのやら、いまいちピンときません。 そもそも疎いからこそレポートを買おうとしているわけで、 ピンと来ないのは当たり前ですよね? さあ、どうしましょう?

そのレポートを活用することによって我々の利益がどのくらい増えるのか、 目に見えるのであれば分かりやすいのですが、 あいにくそのレポートが即、利益につながるわけではありません。 確かにそのレポートが役に立つであろうことは間違いない (だから買おうとしている) のですが、 利益増にどのくらい貢献しそうか、というと主観的に判断せざるを得ません。 でもって、主観ということになると、 どうしても他社の仕事より自社の仕事の 利益貢献度合いのほうを高く見積りたくなるものでしょう。

- o -

御社のレポートが、弊社のビジネスに大変役立つであろうことは 疑いの余地がないのですが、 もちろんレポートが直接利益を生むわけではなく、 弊社としてもいろいろコストをかけていく必要があるわけでして、 御社がこのレポート作成に多大なコストをかける必要があることは 重々承知しているのですが、 最終的な利益を御社と弊社とでどう配分すべきか、というと なかなか難しいものですね〜 なにかもっとこう客観的な指標はないでしょうか。

と、いいますと?

例えば、このレポート作成に、何人の人が何ヵ月くらいかかりそうか、とか。


KLab 社内には、社内専用の IRC サーバがあります。 IRC (Internet Relay Chat) つまり、 ネットワークリアルタイム会議システムです。 普通の IRC はインターネットに接続できれば、 誰でも使えるのですが、 KLab 社内 IRC は、KLab のイントラネットに接続できる人しか使えません (VPNワープを使って社外からもアクセスできます)。 だから社外秘な内容も流せますし、 社内ミーティングを IRC で済ませてしまうこともよくあります。

社内 IRC が真価を発揮するのは、 コンテンツ提供用の WWW サーバ システム (DSAS) の メンテナンス作業の時など、 多くの人がリアルタイムに状況 (メンテナンス作業の進捗状況) を 共有したいときです。 メンテナンス作業は、 コンテンツ提供サービスに悪影響を与えていないか確認しつつ 慎重に進める必要があるのですが、 それには実作業を行なう人と、 その作業をチェックする人、 そしてコンテンツ提供に悪影響が及んでいないか監視する人など、 沢山の人が進捗状況をリアルタイムに把握する必要があります。

関係者が全員同じフロアにいれば、 大声をあげるだけでも進行状況の「雰囲気」を共有できるでしょうが、 KLab の場合は東京、大阪、福岡のオフィスの他、 SOHO 形態で働いている人もいますし、 DSAS メンテナンスの場合はデータセンタ (東京二ヶ所と九州一ヶ所) にいる人とも 連係しなければなりません。 遠隔地の人と手軽に「雰囲気」を共有する手段として、 社内 IRC はとても便利です。

あまりに便利なので、 技術者の大半が常時 IRC サーバに「常駐」しているのですが、 こうなってくると計画的な作業の連絡用だけでなく、 技術者全員の横のつながりというか、 部署を超えて技術者同士が連係できる共有空間の役割を果たすようになります。 例えば昨晩も...

18:28 (sengoku`) チープ教育 http://cn.ce-lab.net/ja/toshi/archives/2006/08/post_75.html
18:29 (sengoku`) ↑これ、かなり本質をついてる気がするのですが、皆さんはどう思いますか?
18:30 (sengoku`) 私がはじめて出会った PC (当時の呼称はマイコン) は、とてもチープだったんで、自分で作ろう、という気が起きたけど、今の PC 見て、作ってみよう、と思う人はいないよねぇ..

チープ教育」を読んで、 ぜひみんなに紹介したいと思ったので、 とりあえず社内 IRC に投げてみたわけです。 ほどなく隣の部署の人から反応がありました。

18:34 (koura-h) 細部の作り込みに入ってしまうのって、それはそれで楽しいときもありますけど、苦痛になってしまうことも多いっす。。。
18:35 (koura-h) 制作環境における「チープさ」って、ありがたいと思うす。

続いて、協力会社の人からも...

18:39 (ktaka) ある意味、何でもそうだと
18:39 (ktaka) 思います。
18:40 (ktaka) 自動車でも、
18:40 (ktaka) 楽天のような商売でも
18:41 (ktaka) 物理学者が生物学に入っていって、DNAとかの研究が盛んになり始めた衣
18:41 (ktaka) 頃も
18:42 (ktaka) ショックレイがフェアチャイルド社(?)を始め、Intelができた頃も
18:42 (sengoku`) あはは
18:42 (ktaka) みんな始めは、
18:42 (ktaka) ある意味、やればできそうという感覚があったんでしょうね
18:43 (sengoku`) ですよね〜
18:43 (sengoku`) 「へぼくても許される感」って重要ですね〜

反応してない人も、この会話の流れを見てはいるわけで、 技術者同士、考え方を共有することはとても重要なことだと思います。 もちろん社内には情報共有の方法としてメーリングリストも多数あるのですが、 なんでも気楽に書込めるという敷居の低さで、 IRC のほうが勝っていると思います。

18:43 (uchikawa-) itronのコードでも弄ってみますか(秋月のボードで自力で動かすというのはやったことあります)
18:43 (sengoku`) 逆に言うと、へぼが許されないような雰囲気のとき、どうやって「無意味なポジティブさ」を学ぶか意識しないと、ってことですね。
18:44 (sengoku`) まあ、遠慮せずにどんどんやれ、ってことなんですけど、
18:44 (ktaka) 私は、そもそも、参入しないと言うのもありかな、と思っています
18:44 (sengoku`) なかなかポジティブになったことの無い人にそれをやれ、ってのは難しいのかもしれませんね。
18:45 (sengoku`) もちろん、参入しない、という選択肢があるときはそれでもいいんですが、
18:45 (ktaka) 高度に専門家されたことを大きな組織でやるよりも、
18:45 (sengoku`) コンピュータ技術者、って道を選択してしまった人に、いまさら他の道を探せ、ってのも酷でしょうから... ;-)
18:46 (ktaka) 一時代を築く可能性がある、チープなものに出会えれば。。。
18:46 (ktaka) でも
18:46 (ktaka) 一口にコンピューター技術者といっても、いろいろあって
18:47 (ktaka) 昔は、ボードの設計からできそう、だったのが、
18:48 (sengoku`) (いまでも、ちゃちな PC ならボードから設計できるんですけどね、実は)
18:48 (ktaka) 今は、Youtube見たいなの作れそう、っていうのがあるとおもいますので
18:49 (ktaka) おお、すごいですね〜
18:49 (sengoku`) ようは、ポジティブになれるかどうかが、勝負を分けることになるんじゃないかと...
18:49 (ktaka) チープなフェーズにある、面白そうなものって言うのは、いろんなところにあるんではないかと
18:49 (sengoku`) まあ、そういう話は、
18:50 (katsumiD) ( つhttp://journal.mycom.co.jp/column/architecture/037/
18:50 (sengoku`) プログラマを目指すのに適した時代、適していない時代 http://blog.gcd.org/archives/50546204.html ってことに
18:50 (sengoku`) 続くのかな。
18:50 (katsumiD) ちなみに,
18:51 (katsumiD) 今だと CPU を作ろうと思った場合,FPGA とかで作れますが
18:51 (katsumiD) そういうことをしようと思った場合のハードルが,昔に比べて下がっている,と言うのもあるように思いますです
18:52 (ktaka) 確かにそうだと思います>適していない時代
18:52 (sengoku`) いや、あるんですが、ようはそれを自分でやろうという気持ちを起こせるかどうか、ってことだと思います。
18:52 (ktaka) 確かにそうだと思います>CPUを作るハードル
18:52 (sengoku`) 技術的な障壁は確実に下がってるんですが、心理的な障壁は、逆にあがってるかも知れませんねぇ
18:53 (katsumiD) なるほど

若干、会話が錯綜気味で読みにくくなってしまっていますが、 それが逆に、 考えがまとまっていなくてもとりあえず書いてしまえ、 という気楽さにつながっているのでしょう。 メールだと、論旨をはっきりさせて書かねば、という気持ちになりますから、 思ったことをそのままぶつけられる IRC のような場も必要だと思います。

ちなみに、会話に参加している 5人のうち、 4人は声の届く範囲にいたりする (^^;) のですが、 ひざ突き合わせて話そうとすると仕事を中断して集まらなければなりませんし、 大声を出すと会話に興味がない人に迷惑ですし、 URL を伝えるときなどは声よりチャットの方がむしろ便利ですし、 また、IRC だとログが残るので後で参照することもできます。

なお、「プログラマを目指すのに適した時代、適していない時代」に言及したのですが、 どちらかというと「ロングテール戦略が格差社会を生む: 必要は発明の母」のほうが話の流れに近かったかも知れません。 要は、不足感がないと何かをやろうという気力が出てこない、 ということが言いたかったわけです。

18:53 (uchikawa-) 昔だったら「自分で作ったほうが世の中にあるものよりいいものになる」だったですからね
18:54 (sengoku`) 世の中にもっといいものがある、からといって遠慮する必要はないんですけどねぇ、ほんとうは。
18:54 (katsumiD) でも,実は心理障壁を乗り越える人はいつの時代だって乗り越えるし,乗り越えない人はいつだって乗り越えない,というのも,
18:54 (katsumiD) http://www.chiaki.cc/Timpy/index.htm
18:54 (katsumiD) こういうサイトを見ていると思ったりもします
18:54 (katsumiD) (こういうのを見ると,むしょうに自分でも何かをしたくなり出します(^^
18:55 (sengoku`) ぜひぜひ
18:55 (katsumiD) ちなみに,今の時代だと,2足歩行ロボットとか,結構盛り上がってますよね
18:56 (katsumiD) ちょっと前は,2足歩行どころか,普通のロボットでも作る機運ってのは無かったですが
18:56 (ktaka) 私的には、やっぱり、WEBやネットワークがチープなフェーズにあるのではないかと思います
18:57 (katsumiD) 色んな製作記事とかキットが出始めたこととかもあって,アマチュアの人が一杯やってらっしゃいますね
18:57 (sengoku`) まあ、どんな分野でもいいんで、ぜひチャレンジして〜と。

収拾がつかなくなってきたんで、ちょっと投げやりになっています > 私 (^^;)

18:57 (katsumiD) (^^
18:57 (ktaka) なるほど
18:57 (ktaka) >ロボット
18:57 (ktaka) 二足歩行のおもちゃ変えますもんね
18:57 (ktaka) 買えますもんね
18:58 (sengoku`) Web が普及して一番困ったことは、誰もが批評家になっちゃって、自分ではやろうとしなくなったことなのではないかと...
18:58 (ktaka) そうなんですか
18:59 (ktaka) 何でも自分でやる技術者の世界に、批評家が入り込んできたという意味ですか?
18:59 (sengoku`) なんでも web 見れば載ってるんで、
19:00 (sengoku`) 自分でやらずに、自分でやってるような気分になっちゃう
19:00 (sengoku`) 見るのとやるのとでは大違いなのに、たいてーの人は見るだけで満足しちゃうんじゃないかと...

うっかり「批評家」と言ってしまって意図が通じにくくなってしまいましたが、 誤解されてもすぐ補足説明できるのが IRC のいいところですね。 「自分で実行しないで他者の行為をあれこれ言う者」という意味で使ったのですが、 「批評家」ではなく「評論家」と表現すべきでした。

19:01 (katsumiD) あぁ,それはあるかもですねぇ・・・
19:01 (katsumiD) 変な事をしてる人は一杯いて,それをいろいろ満てるだけでお腹いっぱいになってるとか・・・
19:02 (sengoku`) そういう傾向はあるんじゃないかなぁ〜
19:02 (sengoku`) すでにやってる人がいるから、わざわざ自分でやらなくても、って
19:03 (sengoku`) 思っちゃうんじゃないかなぁ
19:03 (sengoku`) やってみれば、新しい発見があるかもしれないのにね。
19:04 (koura-h) それは分かりますね>わざわざ自分で〜
19:05 (koura-h) 何かしりごみするっていうのか、既に誰か手を付けてると後から追いかける意欲が薄れるというか。

ようやく思った通りの結論にたどり着きました (^^)。

19:08 (koura-h) 例えばCPANなんかで、「これ自分で作ったんだけど登録してみよー」とか思っても大抵既に誰かがのっけてたりして、そういうのに何個か当たってしまうとそのしりごみの気持ちが強まってしまうっすね。。。
19:11 (ktaka) なるほど
19:12 (ktaka) >CPAN
19:12 (koura-h) (って打ってたら仙石さんが帰られていったorz

あはは。


プロフィール
2000年、KLab株式会社取締役CTOに就任。1995年以来、TCP/IPパケットリピータ「stone」や、Palm上の時刻表ツール「Time Table Viewer」などを開発・発表する。また、堅牢で安定したサイトgcd.org を運営し、会員にサービスを提供。そこで得たサーバー構築ノウハウを日経Linuxで2000年4月から2年間連載
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